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A群およびB群の問題から各1題(計2題)を選択して解答すること。
問題A-1
社会資本の老朽化が問題とされるなか、限られた財源で社会資本を維持していくためには、ますます構造物の長寿命化が重要となっている。このような観点から、コンクリート構造物の①点検、②評価の判定、③補修・補強について、それぞれの段階における留意点を述べるとともに、コンクリート構造物診断の今後の展望を述べよ。
1.構造物長寿命化の重要性
社会資本の老朽化が問題となっている現在、限られた財源で社会資本を維持していくためには、構造物の長寿命化が大変重要である。わが国の社会資本整備を取り巻く環境は厳しい。今後は、新規投資額は確実に減少していく事、更新投資は増大していく事、維持管理投資も増大していく事、社会資本ストックは確実に増大してく事が予想される。持続可能は社会資本整備を実現するためには、費用を抑えつつ一定レベルの維持管理を実行して社会資本ストックを維持し、新規投資と更新投資の費用を確保して、これを実行することである。
増大する社会資本ストックの性能を一定のレベルで維持し、安心して使っていくためには、計画的な維持管理が必要である。計画的な維持管理を実行することが構造物のライフサイクルコストを最少にすると考えられる。計画的な維持管理には、①点検、②評価と判定、③補修・補強が重要である。この3つは、早期発見・早期治療ということができ、トータルコストを安くして長寿命化に貢献する。
2.維持管理の段階ごとの留意点
①点検:コンクリート構造物では、初期欠陥が耐久性に与える影響が大きい。このため、新設構造物は初回の点検が重要である。初期欠陥は、実際の橋梁に供用後数年で現れる不具合である。初回点検の実施で、初期欠陥の早期発見と早期対策が可能となり、構造物の耐久性向上とLCCの低減を図ることができる。また、施工時の不具合は竣工前に補修されることが多く、意図的・非意図的にかかわらず結果的に隠蔽され、記録に残らない。このような不具合は、記録を残した上で修復することが重要である。施工時の記録と初回点検を組み合わせて、今後の供用期間中の補修・補強などの維持管理を行う際に構造物の初期値なる。供用中のコンクリート構造物では、初回の詳細点検で得られた記録が維持管理上の初期値となる。点検結果を元にした評価と判定により補修補強が実施され、さらにこれらを記録して、その後の点検計画を立てていく。
②評価と判定:一般に、構造物の劣化は経過年数で加速度的に発展するため、早期の適切な補修・補強が多年経過よりもコスト少となる。点検結果を評価し判定する際には、構造物ごとの維持管理計画方針を策定すると良い。この計画には、長寿命化計画と更新計画がある。長寿命化計画には大別して、永久使用目標型、新設時LCC最少型、早期対策型、事後対策型、の4つである。それぞれ、恒久的に使用することを目的とするもの、新設時にLCCを算定してトータルがコスト最少となるもの、点検結果から早期に対処して使用するもの、従来通り異常が生じてから対処するものである。架替えが非常に困難な橋梁や、架替えに莫大な費用が必要な橋梁は、永久使用目的型となる。それ以外の橋梁は適切な計画を選定する。更新計画は長寿命化を目的とせず、架け替えを前提とするものである。高価な補修工事より経済的となる場合に適用する。
③補修・補強:補修・補強は前述の維持管理計画に則って補修計画する。補修計画は、補修後の劣化カーブが重要となる。補修・補強部位に既設構造物を同じ材料を用いる場合、環境変化がないと仮定すれば劣化カーブは同じである。劣化カーブは緩やかなものに出来れば、寿命は延びるため、劣化しにくい材料を用いる事も検討する。
3.コンクリート構造物診断の今後の展望
社会資本の量の増大と高齢化が進んでゆく現代に、構造物の性能を良好に保全する維持管理手法を構築することは急務である。特に維持管理の根幹となる点検の合理化・最適化は、維持管理行為の費用対効果を高めトータルコストの低減を図ることが出来る重要な課題であると考える。
社会資本の老朽化が問題となっている現在、限られた財源で社会資本を維持していくためには、構造物の長寿命化が大変重要である。わが国の社会資本整備を取り巻く環境は厳しい。今後は、新規投資額は確実に減少していく事、更新投資は増大していく事、維持管理投資も増大していく事、社会資本ストックは確実に増大してく事が予想される。持続可能は社会資本整備を実現するためには、費用を抑えつつ一定レベルの維持管理を実行して社会資本ストックを維持し、新規投資と更新投資の費用を確保して、これを実行することである。
増大する社会資本ストックの性能を一定のレベルで維持し、安心して使っていくためには、計画的な維持管理が必要である。計画的な維持管理を実行することが構造物のライフサイクルコストを最少にすると考えられる。計画的な維持管理には、①点検、②評価と判定、③補修・補強が重要である。この3つは、早期発見・早期治療ということができ、トータルコストを安くして長寿命化に貢献する。
2.維持管理の段階ごとの留意点
①点検:コンクリート構造物では、初期欠陥が耐久性に与える影響が大きい。このため、新設構造物は初回の点検が重要である。初期欠陥は、実際の橋梁に供用後数年で現れる不具合である。初回点検の実施で、初期欠陥の早期発見と早期対策が可能となり、構造物の耐久性向上とLCCの低減を図ることができる。また、施工時の不具合は竣工前に補修されることが多く、意図的・非意図的にかかわらず結果的に隠蔽され、記録に残らない。このような不具合は、記録を残した上で修復することが重要である。施工時の記録と初回点検を組み合わせて、今後の供用期間中の補修・補強などの維持管理を行う際に構造物の初期値なる。供用中のコンクリート構造物では、初回の詳細点検で得られた記録が維持管理上の初期値となる。点検結果を元にした評価と判定により補修補強が実施され、さらにこれらを記録して、その後の点検計画を立てていく。
②評価と判定:一般に、構造物の劣化は経過年数で加速度的に発展するため、早期の適切な補修・補強が多年経過よりもコスト少となる。点検結果を評価し判定する際には、構造物ごとの維持管理計画方針を策定すると良い。この計画には、長寿命化計画と更新計画がある。長寿命化計画には大別して、永久使用目標型、新設時LCC最少型、早期対策型、事後対策型、の4つである。それぞれ、恒久的に使用することを目的とするもの、新設時にLCCを算定してトータルがコスト最少となるもの、点検結果から早期に対処して使用するもの、従来通り異常が生じてから対処するものである。架替えが非常に困難な橋梁や、架替えに莫大な費用が必要な橋梁は、永久使用目的型となる。それ以外の橋梁は適切な計画を選定する。更新計画は長寿命化を目的とせず、架け替えを前提とするものである。高価な補修工事より経済的となる場合に適用する。
③補修・補強:補修・補強は前述の維持管理計画に則って補修計画する。補修計画は、補修後の劣化カーブが重要となる。補修・補強部位に既設構造物を同じ材料を用いる場合、環境変化がないと仮定すれば劣化カーブは同じである。劣化カーブは緩やかなものに出来れば、寿命は延びるため、劣化しにくい材料を用いる事も検討する。
3.コンクリート構造物診断の今後の展望
社会資本の量の増大と高齢化が進んでゆく現代に、構造物の性能を良好に保全する維持管理手法を構築することは急務である。特に維持管理の根幹となる点検の合理化・最適化は、維持管理行為の費用対効果を高めトータルコストの低減を図ることが出来る重要な課題であると考える。
日本におけるコンクリート構造物の歴史は、鉄筋の誕生と関係が深く20世紀初頭のRC橋を初めに、戦後の高度成長期には膨大なコンクリート構造物が建設された。このような状況の中、50年を経過する社会資本の老朽化が問題視され、コンクリート構造物の長寿命化が重要となってきた。ここではコンクリート建築物に着目して記述する。
(1)コンクリート建築物の点検について
建築物は、設計計画、施工、維持管理および廃棄について、建築基準法により行うこととなっており、そのため建築基準法や関連法令等を遵守する必要があり、この点について土木構造物の場合と大きく異なる。「日本建築学会 建築物の調査・診断指針(案)同解説」によれば、点検については、建設時に作成された保全計画により行う日常点検。定期点検、建築基準法による法定点検によるものがあるが、他に使用者・住居者からの通報・クレームによるものがある。これらについて変状の有無を判断するが、変状の程度によって所有者が調査の要否を判断する。また、1981年に新耐震設計法が導入され、それ以前の建築物についての耐震診断・補強が求められている状況であり、この点についても点検において留意しておく必要がある。
(2)評価と判定について
点検の結果、所有者(管理者)により調査が必要と判断された場合には、調査・劣化診断・補修(維持保全)補強(改良保全)などの実施計画を作成する。実施計画の中の調査には一時劣化調査(目視)、二次劣化調査(非破壊試験)、三次調査(破壊試験)の三段階があり、各段階について、①中性化、②鉄筋腐食、③ひび割れ、④漏水、⑤強度劣化、⑥大たわみ、⑦表面劣化、⑧凍害の劣化現象に着目して調査を行うことになっている。所有者は一次劣化調査について評価し、補修補強の必要性を判断するが、判断できない場合には二次、三次劣化調査を実施する。補修・補強が必要と判定された場合には、目的、目標性能および予算計画を検討する。ここで、旧建築基準法で建設された構造物について、耐震補強のように保全の規模が大規模となる場合には、現行の建築基準法に適合しなければならないことに留意する必要がある。
(3)補修・補強について
補修・補強が必要と判断された場合には、所有者は補修・補強工法の調査、設計者の選定、契約および施工者の選定、契約を行う。設計者は設計のための調査、保全計画を含む補修・補強計画の作成および補修・補強設計図書の作成を行う。耐震補強は、既に供用されている建物に対する補強工事のため、工事期間中の一時的移転、仮設建物の建築、経済活動の中断などコスト増大に繋がるため、入念な計画を行う必要がある。また、工事期間中の騒音・粉塵や産業廃棄物などの環境問題にも留意する必要がある。
(4)今後の展望
建築分野において、中高層(3階建て以上)のマンションストック戸数は560万戸以上で居住人口は約1400万人とも言われている。今後少子高齢化が進む日本では、さらに建設財源の減少が予測され、消費型社会から循環型社会に移行することが重要である。今後さらに老朽化が進むコンクリート建築物の延命化や機能・性能の向上を図ること、また時代とともに益々多様化、高度化するニーズに応え価値を維持するためのストックマネージメントが重要な時代である。このような中、安全に安心して快適に暮らせる住環境を維持・向上させるためには、建設技術者の役割は重要であり、今後コンクリート構造診断士など、専門技術者の育成と診断技術の向上を図ることが益々重要である。
(1)コンクリート建築物の点検について
建築物は、設計計画、施工、維持管理および廃棄について、建築基準法により行うこととなっており、そのため建築基準法や関連法令等を遵守する必要があり、この点について土木構造物の場合と大きく異なる。「日本建築学会 建築物の調査・診断指針(案)同解説」によれば、点検については、建設時に作成された保全計画により行う日常点検。定期点検、建築基準法による法定点検によるものがあるが、他に使用者・住居者からの通報・クレームによるものがある。これらについて変状の有無を判断するが、変状の程度によって所有者が調査の要否を判断する。また、1981年に新耐震設計法が導入され、それ以前の建築物についての耐震診断・補強が求められている状況であり、この点についても点検において留意しておく必要がある。
(2)評価と判定について
点検の結果、所有者(管理者)により調査が必要と判断された場合には、調査・劣化診断・補修(維持保全)補強(改良保全)などの実施計画を作成する。実施計画の中の調査には一時劣化調査(目視)、二次劣化調査(非破壊試験)、三次調査(破壊試験)の三段階があり、各段階について、①中性化、②鉄筋腐食、③ひび割れ、④漏水、⑤強度劣化、⑥大たわみ、⑦表面劣化、⑧凍害の劣化現象に着目して調査を行うことになっている。所有者は一次劣化調査について評価し、補修補強の必要性を判断するが、判断できない場合には二次、三次劣化調査を実施する。補修・補強が必要と判定された場合には、目的、目標性能および予算計画を検討する。ここで、旧建築基準法で建設された構造物について、耐震補強のように保全の規模が大規模となる場合には、現行の建築基準法に適合しなければならないことに留意する必要がある。
(3)補修・補強について
補修・補強が必要と判断された場合には、所有者は補修・補強工法の調査、設計者の選定、契約および施工者の選定、契約を行う。設計者は設計のための調査、保全計画を含む補修・補強計画の作成および補修・補強設計図書の作成を行う。耐震補強は、既に供用されている建物に対する補強工事のため、工事期間中の一時的移転、仮設建物の建築、経済活動の中断などコスト増大に繋がるため、入念な計画を行う必要がある。また、工事期間中の騒音・粉塵や産業廃棄物などの環境問題にも留意する必要がある。
(4)今後の展望
建築分野において、中高層(3階建て以上)のマンションストック戸数は560万戸以上で居住人口は約1400万人とも言われている。今後少子高齢化が進む日本では、さらに建設財源の減少が予測され、消費型社会から循環型社会に移行することが重要である。今後さらに老朽化が進むコンクリート建築物の延命化や機能・性能の向上を図ること、また時代とともに益々多様化、高度化するニーズに応え価値を維持するためのストックマネージメントが重要な時代である。このような中、安全に安心して快適に暮らせる住環境を維持・向上させるためには、建設技術者の役割は重要であり、今後コンクリート構造診断士など、専門技術者の育成と診断技術の向上を図ることが益々重要である。
問題A-2
プレストレストコンクリート(PC)構造物について、次の(1)および(2)の問いについて答えよ。
(1) ①施工に関わる分野、②材料に関わる分野、それぞれについて技術の変遷を述べよ。
(2) (1)で記述した分野の一つを選び、この語のあるべき姿についてあなたの考えを述べよ。
(1)PC技術の変遷
日本のPC構造物の歴史は、1951年のPCマクラギ、PC版およびプレステンションPC桁の工場製品から始まり、2008年の道路統計年報によれば、橋長15m以上のPC橋は5万9千橋におよぶ。この間のPC技術全般について飛躍的に向上しているが、PC定着工法とコンクリート材料の変遷について述べる。
①施工に関わる分野
PC定着工法の変遷について
PC定着工法の始まりは、フレシネーが1928年にフランス国内にPCの基本特許を出願したのを初めに、1939年にはポストテンション方式のフレシネー定着方法を実用化した。基本特許が切れた第二次世界大戦以降は欧米ではポストテンション方式の定着工法が盛んに開発され、現在では30以上のポストテンション定着工法が開発された。わが国には、主要な工法が導入されるとともに、国産のPC定着工法も開発された。
また、国内のポストテンション方式単純T桁の定着位置については、1969年の「建設省標準設計」では、曲げモーメントに対し合理的な配置として、PC鋼材の約半数を主桁上縁に定着していた。その後、切欠き定着部への雨水の侵入やPC鋼材の損傷が生じるリスクを回避し、PC鋼材の大容量の定着工法が開発され、1994年の「建設省標準設計」においては、PC鋼材をすべて桁端部に定着することに改訂された。
②材料に関わる分野
コンクリート材料について
ポルトランドセメントの製造は、1825年にイギリスで始まったといわれている。我が国においては、1873年に深川にセメント工場が建設され、1875年に初めてセメントクリンカーが製造、1896年にはポルトランドセメントの製造が開始された。その後1931年に高炉セメント、1921年にシリカセメント、1929年に早強セメント、1934年には中庸熱ポルトランドセメントの製造が始まった。また戦後の高度成長期には社会ニーズや構造物の要求性能に合わせ、AE減水剤の開発、コンクリートポンプ車の導入等により、コンクリートの要求性能がさらに高まり、1953年にはJIS A 5308「レディミクストコンクリート」が制定された。
1962年の高性能減水剤の発明後、1987年には高性能AE減水剤が開発されると、高強度、高流動など高性能なコンクリートが実用化され、現在では200N/mm2を超えるコンクリートが開発されている。
(2)コンクリート材料に関して今後のあるべき姿
近年、橋梁の長大化、ビルの高層化に伴い、コンクリートの超高強度化のニーズは高まっている。このような中、使用するセメント量の増加や使用骨材によって、コンクリートの収縮量に起因するひび割れが問題視されている。そのため、土木学会および日本建築学会では、コンクリートの乾燥収縮量の上限値を設定し対策を講じたところである。さらにはセメント量の増加によるASRの発生も懸念されており、アルカリ総量の規制を厳しくする発注機関も出てきている。また高炉スラグ微粉末やフライアッシュの使用など、ASR抑制対策の研究も進んでいる。このようにコンクリートの性能が高度化する半面、課題も表面化しており、コンクリート材料の更なる研究開発が必要である。また、我が国の資源は限られており、特に地域生産地域消費してきた骨材については、コンクリート材料の7割を占めており重要な材料である。今後高度化する社会のニーズに応えられるように社会基盤を整備するためには、限られた資源の有効な利用と既設コンクリート構造物の再利用化について、十分な議論と検討をしていくことが重要である。
日本のPC構造物の歴史は、1951年のPCマクラギ、PC版およびプレステンションPC桁の工場製品から始まり、2008年の道路統計年報によれば、橋長15m以上のPC橋は5万9千橋におよぶ。この間のPC技術全般について飛躍的に向上しているが、PC定着工法とコンクリート材料の変遷について述べる。
①施工に関わる分野
PC定着工法の変遷について
PC定着工法の始まりは、フレシネーが1928年にフランス国内にPCの基本特許を出願したのを初めに、1939年にはポストテンション方式のフレシネー定着方法を実用化した。基本特許が切れた第二次世界大戦以降は欧米ではポストテンション方式の定着工法が盛んに開発され、現在では30以上のポストテンション定着工法が開発された。わが国には、主要な工法が導入されるとともに、国産のPC定着工法も開発された。
また、国内のポストテンション方式単純T桁の定着位置については、1969年の「建設省標準設計」では、曲げモーメントに対し合理的な配置として、PC鋼材の約半数を主桁上縁に定着していた。その後、切欠き定着部への雨水の侵入やPC鋼材の損傷が生じるリスクを回避し、PC鋼材の大容量の定着工法が開発され、1994年の「建設省標準設計」においては、PC鋼材をすべて桁端部に定着することに改訂された。
②材料に関わる分野
コンクリート材料について
ポルトランドセメントの製造は、1825年にイギリスで始まったといわれている。我が国においては、1873年に深川にセメント工場が建設され、1875年に初めてセメントクリンカーが製造、1896年にはポルトランドセメントの製造が開始された。その後1931年に高炉セメント、1921年にシリカセメント、1929年に早強セメント、1934年には中庸熱ポルトランドセメントの製造が始まった。また戦後の高度成長期には社会ニーズや構造物の要求性能に合わせ、AE減水剤の開発、コンクリートポンプ車の導入等により、コンクリートの要求性能がさらに高まり、1953年にはJIS A 5308「レディミクストコンクリート」が制定された。
1962年の高性能減水剤の発明後、1987年には高性能AE減水剤が開発されると、高強度、高流動など高性能なコンクリートが実用化され、現在では200N/mm2を超えるコンクリートが開発されている。
(2)コンクリート材料に関して今後のあるべき姿
近年、橋梁の長大化、ビルの高層化に伴い、コンクリートの超高強度化のニーズは高まっている。このような中、使用するセメント量の増加や使用骨材によって、コンクリートの収縮量に起因するひび割れが問題視されている。そのため、土木学会および日本建築学会では、コンクリートの乾燥収縮量の上限値を設定し対策を講じたところである。さらにはセメント量の増加によるASRの発生も懸念されており、アルカリ総量の規制を厳しくする発注機関も出てきている。また高炉スラグ微粉末やフライアッシュの使用など、ASR抑制対策の研究も進んでいる。このようにコンクリートの性能が高度化する半面、課題も表面化しており、コンクリート材料の更なる研究開発が必要である。また、我が国の資源は限られており、特に地域生産地域消費してきた骨材については、コンクリート材料の7割を占めており重要な材料である。今後高度化する社会のニーズに応えられるように社会基盤を整備するためには、限られた資源の有効な利用と既設コンクリート構造物の再利用化について、十分な議論と検討をしていくことが重要である。
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