A群およびB群の問題から各1題(計2題)を選択して解答すること。
問題B-1
海からの飛来塩分が多い環境下にあるコンクリート構造物に関して、以下の問いに答えよ。
(1)塩害を受けた既設コンクリート構造物の調査および診断の方法について述べよ。
(2)劣化の程度に対応されて、既設コンクリート構造物の補修・補強などの措置の方法について述べよ。
(1)調査および診断方法
塩害とは、コンクリート中の鋼材の腐食が塩化物イオンにより促進され、鋼材の発錆による体積膨張がコンクリートにひび割れや剥離を引き起こしたり、鋼材断面減少に伴うことで構造物の性能が低下する現象である。コンクリート構造物では鉄筋やPC鋼材の劣化程度が耐荷性能に大きく影響するが、これらはコンクリート中に埋め込まれており、直接も目視調査できない。塩害劣化がコンクリート表面に現れた段階では内部鋼材の発錆や断面減少が相当進行しており、手の施しようがないこともある。このような性状はRC構造よりもPC構造において顕著である。したがって、塩害環境下にあるコンクリート構造物は、劣化が顕在化する前の早期の調査・診断が重要で、現在の劣化の程度の把握とともに、今後の劣化予測を行うことが必要である。
海からの飛来塩分が多い環境下においては、コンクリート表面に付着した塩化物イオンが内部に浸透することによって生じるため、塩害劣化の進行はコンクリート表面に供給される塩化物イオン量とコンクリート中を浸透する塩化物イオンの拡散の程度に影響される。したがって、実構造物から採取した試料をもとに塩化物イオンの拡散予測を行い、内部鋼材の深さとの関係から将来の劣化を予測することが基本となる。
なお、コンクリート表面の塩化物イオンの分布は、海からの距離や高さだけでなく、構造物の形状や向きによっても大きく異なる。例えばPC桁橋において、海側と山側の主桁では塩化物イオン濃度が大きく異なり、1本の主桁の裏面でも異なる。そのため、試料の採取位置の決定は、このような濃度分布の違いに留意して行う。
(2)補修・補強
塩害劣化の進行程度を4段階に分類し、各段階に応じた補修・補強措置の方法を記す。
①潜伏期 塩化物イオン濃度は腐食発生限界以下で、外観上の変状が見られない段階である。腐食ひび割れは発生していないが、鉄筋近傍での塩化物イオン濃度が増加傾向にあるので、劣化因子の遮断目的とした、表面被覆工法やひび割れ補給工法、予防保全としての電気防食方法を適用する。
②進展期 塩化物イオン濃度は腐食発生限界以上で、鋼材の腐食開始から腐食ひび割れ発生の間の段階である。劣化因子の遮断だけでは十分な補修効果が期待できないので、表面被覆工法、ひび割れ補修工法に加え、鉄筋腐食の進行速度を抑制するための電気防食工法、限界を超えたい塩化物イオンを除去する電気化学的脱塩工法、塩化物イオンを含んだコンクリートを除去する断面修復工法を適用する。
③加速期 腐食ひび割れが多数発生し腐食速度が増大しており、錆汁や部分的な剥離・剥落が見られる段階である。劣化したコンクリートの除去や鉄筋腐食の進行を抑制するため、電気防食工法、電気化学的脱塩工法、断面修復工法を適用する。
④劣化期 腐食がますます進行しており、ひび割れ幅の拡大や、剥離・剥落が見られ、部材の耐荷力の低下が懸念される段階である。電気防食工法、電気化学的脱塩工法、断面修復工法に加え、腐食量の増大により耐荷力の低下が懸念される場合は、コンクリート巻立て工法、鋼板・FRP接着工法などの補強、大規模なコンクリート打ち換え工法を検討する。
塩害とは、コンクリート中の鋼材の腐食が塩化物イオンにより促進され、鋼材の発錆による体積膨張がコンクリートにひび割れや剥離を引き起こしたり、鋼材断面減少に伴うことで構造物の性能が低下する現象である。コンクリート構造物では鉄筋やPC鋼材の劣化程度が耐荷性能に大きく影響するが、これらはコンクリート中に埋め込まれており、直接も目視調査できない。塩害劣化がコンクリート表面に現れた段階では内部鋼材の発錆や断面減少が相当進行しており、手の施しようがないこともある。このような性状はRC構造よりもPC構造において顕著である。したがって、塩害環境下にあるコンクリート構造物は、劣化が顕在化する前の早期の調査・診断が重要で、現在の劣化の程度の把握とともに、今後の劣化予測を行うことが必要である。
海からの飛来塩分が多い環境下においては、コンクリート表面に付着した塩化物イオンが内部に浸透することによって生じるため、塩害劣化の進行はコンクリート表面に供給される塩化物イオン量とコンクリート中を浸透する塩化物イオンの拡散の程度に影響される。したがって、実構造物から採取した試料をもとに塩化物イオンの拡散予測を行い、内部鋼材の深さとの関係から将来の劣化を予測することが基本となる。
なお、コンクリート表面の塩化物イオンの分布は、海からの距離や高さだけでなく、構造物の形状や向きによっても大きく異なる。例えばPC桁橋において、海側と山側の主桁では塩化物イオン濃度が大きく異なり、1本の主桁の裏面でも異なる。そのため、試料の採取位置の決定は、このような濃度分布の違いに留意して行う。
(2)補修・補強
塩害劣化の進行程度を4段階に分類し、各段階に応じた補修・補強措置の方法を記す。
①潜伏期 塩化物イオン濃度は腐食発生限界以下で、外観上の変状が見られない段階である。腐食ひび割れは発生していないが、鉄筋近傍での塩化物イオン濃度が増加傾向にあるので、劣化因子の遮断目的とした、表面被覆工法やひび割れ補給工法、予防保全としての電気防食方法を適用する。
②進展期 塩化物イオン濃度は腐食発生限界以上で、鋼材の腐食開始から腐食ひび割れ発生の間の段階である。劣化因子の遮断だけでは十分な補修効果が期待できないので、表面被覆工法、ひび割れ補修工法に加え、鉄筋腐食の進行速度を抑制するための電気防食工法、限界を超えたい塩化物イオンを除去する電気化学的脱塩工法、塩化物イオンを含んだコンクリートを除去する断面修復工法を適用する。
③加速期 腐食ひび割れが多数発生し腐食速度が増大しており、錆汁や部分的な剥離・剥落が見られる段階である。劣化したコンクリートの除去や鉄筋腐食の進行を抑制するため、電気防食工法、電気化学的脱塩工法、断面修復工法を適用する。
④劣化期 腐食がますます進行しており、ひび割れ幅の拡大や、剥離・剥落が見られ、部材の耐荷力の低下が懸念される段階である。電気防食工法、電気化学的脱塩工法、断面修復工法に加え、腐食量の増大により耐荷力の低下が懸念される場合は、コンクリート巻立て工法、鋼板・FRP接着工法などの補強、大規模なコンクリート打ち換え工法を検討する。
問題B-2
(1)あなたが専門とする分野におけるコンクリート構造物について、耐震設計基準や規定の変遷を述べよ。
(2)現在の耐震設計基準を満足しない既設コンクリート構造物の事例を1つ挙げ、その構造物の耐震診断と耐震対策について述べよ。
(1)道路橋における、耐震設計基準は規定の変遷
道路橋の耐震設計は、関東大震災後の「大正15年道路構造に関する細則案」に始まる。示方書類は「昭和14年鋼道路橋設計示方書案」が定められた。耐震設計の基準類は、その後の福井地震、新潟地震、宮城県沖地震、浦河沖地震、日本海中部地震、兵庫県南部地震など主な地震被害を受けて改訂を重ねてきた。 耐震設計法については当初から震度法に基づいており、関東大震災後の示方書案から、標準の水平震度として0.2(鉛直震度は0.1)が定められた。その後、建設地の地域特性や地盤、構造物の重要度などによる設計震度の補正係数が加えられ、「昭和46年道路橋耐震設計指針」では構造物の応答を考慮した修正震度法が導入された。
「昭和55年道路橋示方書Ⅴ耐震設計編」から、RC部材のぜい性的な破壊を防ぐ目的で地震時変形性能の照査が加えられた。「兵船2年道路橋示方書Ⅴ耐震設計編」では、従来の震度法と修正震度法を新たに震度法としてまとめ直すとともに、RC橋脚の変形性能照査として保有水平耐力の照査規定が設けられた。兵庫県南部地震を受けて改訂された「平成8年道路橋示方書Ⅴ耐震設計編」では、震度法に加え、発生率が低い大きな強度を持つ地震動も考慮することになった。橋の耐震設計では、供用期間中に発生する確率が高い地震動(レベル1地震動)と供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度を持つ地震動(レベル2地震動)の2段階の地震動を考慮するものである。さらにレベル2の地震動ではプレート境界型の大規模地震動のタイプⅠ地震動と内陸直下型地震動のタイプⅡを考慮することとなった。
(2)現在の耐震設計基準を満足しない道路橋の事例と耐震診断と耐震対策
道路橋における現在の耐震基準である「平成14年道路橋示方書Ⅴ耐震設計編」を元に、これを満足しない落橋防止システムについて述べる。既設橋梁の落橋防止システムは設計年代に応じて、設置されているものの強度が不足しているものや、新たに設置する必要があるものがある。
従来、桁かかり長さは支間に応じて設定していた。現在の基準では、大規模地震を想定した桁端部における相対変位を基本として算出するように改訂された。桁かかり長は、落橋防止システムの中で、最も重要とされているものである。現在の基準で桁かかり長を算出し、不足するものについては下部構造の天端に鋼製または鉄筋コンクリート製のブランケットを増設して、必要な桁かかり長を確保する。
段差防止構造の設置は現在の基準で新たに設けられたもので、支承が破損した場合に生じる路面の段差防止を目的とする。したがって、段差防止構造の増設は既設支承高の高い場合に実施され、施工性から既設支承脇にゴム板とコンクリートあるいは鋼製台座を組み合わせた構造が多く見られる。設置に際しては、支承周りの維持管理に留意し増設部材が既設支承を隠さないようにすることも重要である。段差防止構造を設置することによって、大地震により万一支承が損傷した場合でも緊急車両の通行が確保される。
道路橋の耐震設計は、関東大震災後の「大正15年道路構造に関する細則案」に始まる。示方書類は「昭和14年鋼道路橋設計示方書案」が定められた。耐震設計の基準類は、その後の福井地震、新潟地震、宮城県沖地震、浦河沖地震、日本海中部地震、兵庫県南部地震など主な地震被害を受けて改訂を重ねてきた。 耐震設計法については当初から震度法に基づいており、関東大震災後の示方書案から、標準の水平震度として0.2(鉛直震度は0.1)が定められた。その後、建設地の地域特性や地盤、構造物の重要度などによる設計震度の補正係数が加えられ、「昭和46年道路橋耐震設計指針」では構造物の応答を考慮した修正震度法が導入された。
「昭和55年道路橋示方書Ⅴ耐震設計編」から、RC部材のぜい性的な破壊を防ぐ目的で地震時変形性能の照査が加えられた。「兵船2年道路橋示方書Ⅴ耐震設計編」では、従来の震度法と修正震度法を新たに震度法としてまとめ直すとともに、RC橋脚の変形性能照査として保有水平耐力の照査規定が設けられた。兵庫県南部地震を受けて改訂された「平成8年道路橋示方書Ⅴ耐震設計編」では、震度法に加え、発生率が低い大きな強度を持つ地震動も考慮することになった。橋の耐震設計では、供用期間中に発生する確率が高い地震動(レベル1地震動)と供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度を持つ地震動(レベル2地震動)の2段階の地震動を考慮するものである。さらにレベル2の地震動ではプレート境界型の大規模地震動のタイプⅠ地震動と内陸直下型地震動のタイプⅡを考慮することとなった。
(2)現在の耐震設計基準を満足しない道路橋の事例と耐震診断と耐震対策
道路橋における現在の耐震基準である「平成14年道路橋示方書Ⅴ耐震設計編」を元に、これを満足しない落橋防止システムについて述べる。既設橋梁の落橋防止システムは設計年代に応じて、設置されているものの強度が不足しているものや、新たに設置する必要があるものがある。
従来、桁かかり長さは支間に応じて設定していた。現在の基準では、大規模地震を想定した桁端部における相対変位を基本として算出するように改訂された。桁かかり長は、落橋防止システムの中で、最も重要とされているものである。現在の基準で桁かかり長を算出し、不足するものについては下部構造の天端に鋼製または鉄筋コンクリート製のブランケットを増設して、必要な桁かかり長を確保する。
段差防止構造の設置は現在の基準で新たに設けられたもので、支承が破損した場合に生じる路面の段差防止を目的とする。したがって、段差防止構造の増設は既設支承高の高い場合に実施され、施工性から既設支承脇にゴム板とコンクリートあるいは鋼製台座を組み合わせた構造が多く見られる。設置に際しては、支承周りの維持管理に留意し増設部材が既設支承を隠さないようにすることも重要である。段差防止構造を設置することによって、大地震により万一支承が損傷した場合でも緊急車両の通行が確保される。
(1)プレストレストコンクリート(PC)造建築物の耐震基準の変遷
PC造建築物の耐震設計に関する最初の法的規定は、1960年(昭和35年)の建設省告示第223号であり、当時一般的であった短期許容応力度設計法に代わり終局強度型設計法が導入されていた。本設計法の特徴は、地震時に1.2(G+P)+1.5Kで与えられる荷重組合せに対して、部材の終局強度が下回らないことを確かめるものであった。ここに、G:固定荷重、P:積載荷重、K:地震荷重。さらに、建物高さは16m以下、かつ4層以下と規模に対する制限も厳しく規定されていた。
1973年(昭和48年)には告示が改正され(建設省告示949号)、以前の高さ制限である16m以下が撤廃され、建物高さ31mまでの建築が認められるようになった。地震に対する設計用荷重の組合せとして曲げに対してG+P+1.5K、せん断に対してG+P+2.0Kと改正された。
1981年には、耐震設計の大きなターニングポイントとなった施行令の改正、いわゆる”新耐震設計法”の導入が行われた。新耐震設計法では、地震荷重に対する設計が1次設計(短期許容応力度設計)と2次設計(保有水平耐力の確認)の2段階となった。それに合わせてPC造の規定である建設省告示第1320号が1983年(昭和58年)に制定され、PC造については2次設計における保有水平耐力の確認と同等な設計法として、従来からの終局強度型設計は設計ルート3aとして位置付けられた。ルート3aでは、RC造など他の構造と併用する場合も含めて、高さ31m以下のPC造建築物に終局強度型設計法が適用可能とされた。保有水平耐力の確認はルート3bと名付けられ、建物高さ31mを超える場合には、本設計ルートによることが規定された(ただし、高さ60m以下)。ルート3aでは、地震に対する荷重の組合せはG+P+1.5・Fes・Kとされた。Fesは、剛性率、偏心率による割増し係数である。PC造建築物は、1981年以前より地震荷重に対してベースシアー係数にして0.2×1.5=0.3の弾性応力を用いて終局強度型設計を行ってきた訳で、新耐震設計法の精神を先取りしていたといえる。
2007年のPC造の告示改正では、ルート3a等の設計法はそのまま踏襲され、加えて高さ60m以下のPC造建築物の設計に限界耐力計算法が追加された。限界耐力計算法が、地震応答スペクトルと建築物を等価1質点系モデルに置換した荷重-変位関係の比較から建築物の応答値(耐力と変形)を評価する方法である。もう一つの改正点は、アンボンドPC鋼材の使用を大梁や柱等の主要構造部材にまで拡大したことである。
(2)耐震診断と耐震対策
新耐震設計法が導入される1981年以前の建築物は、地震荷重に対して短期許容応力度設計によって設計されているため、現行の耐震基準を満足していないことが多い。これらの耐震性が不足すると思われる建築物は耐震診断によって耐震性を判定することになる。
既設コンクリート構造物の耐震診断は、日本建築防災協会発行の「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説」により行うのが一般的である。構造体の保有する耐震性能を構造耐震指標Isとし、対応する判定値を構造体新判定指標Isoとして表し、Is≧Isoであれば、構造体の保有する耐震性能が判定値以上であるので、構造体は一応安全、すなわち想定する地震動に対して所要の耐震性能を確保しているとし、そうでなければ耐震性に疑問ありとする。耐震性に疑問ありとされた建築物は耐震対策をすることになる
耐震補強工法には、壁の増設による補強、柱の補強、鉄骨系架構による補強、外付けフレームの増設による補強などがある。外付けフレームの増設の中にはプレストレスを利用したものがある。
PC造建築物の耐震設計に関する最初の法的規定は、1960年(昭和35年)の建設省告示第223号であり、当時一般的であった短期許容応力度設計法に代わり終局強度型設計法が導入されていた。本設計法の特徴は、地震時に1.2(G+P)+1.5Kで与えられる荷重組合せに対して、部材の終局強度が下回らないことを確かめるものであった。ここに、G:固定荷重、P:積載荷重、K:地震荷重。さらに、建物高さは16m以下、かつ4層以下と規模に対する制限も厳しく規定されていた。
1973年(昭和48年)には告示が改正され(建設省告示949号)、以前の高さ制限である16m以下が撤廃され、建物高さ31mまでの建築が認められるようになった。地震に対する設計用荷重の組合せとして曲げに対してG+P+1.5K、せん断に対してG+P+2.0Kと改正された。
1981年には、耐震設計の大きなターニングポイントとなった施行令の改正、いわゆる”新耐震設計法”の導入が行われた。新耐震設計法では、地震荷重に対する設計が1次設計(短期許容応力度設計)と2次設計(保有水平耐力の確認)の2段階となった。それに合わせてPC造の規定である建設省告示第1320号が1983年(昭和58年)に制定され、PC造については2次設計における保有水平耐力の確認と同等な設計法として、従来からの終局強度型設計は設計ルート3aとして位置付けられた。ルート3aでは、RC造など他の構造と併用する場合も含めて、高さ31m以下のPC造建築物に終局強度型設計法が適用可能とされた。保有水平耐力の確認はルート3bと名付けられ、建物高さ31mを超える場合には、本設計ルートによることが規定された(ただし、高さ60m以下)。ルート3aでは、地震に対する荷重の組合せはG+P+1.5・Fes・Kとされた。Fesは、剛性率、偏心率による割増し係数である。PC造建築物は、1981年以前より地震荷重に対してベースシアー係数にして0.2×1.5=0.3の弾性応力を用いて終局強度型設計を行ってきた訳で、新耐震設計法の精神を先取りしていたといえる。
2007年のPC造の告示改正では、ルート3a等の設計法はそのまま踏襲され、加えて高さ60m以下のPC造建築物の設計に限界耐力計算法が追加された。限界耐力計算法が、地震応答スペクトルと建築物を等価1質点系モデルに置換した荷重-変位関係の比較から建築物の応答値(耐力と変形)を評価する方法である。もう一つの改正点は、アンボンドPC鋼材の使用を大梁や柱等の主要構造部材にまで拡大したことである。
(2)耐震診断と耐震対策
新耐震設計法が導入される1981年以前の建築物は、地震荷重に対して短期許容応力度設計によって設計されているため、現行の耐震基準を満足していないことが多い。これらの耐震性が不足すると思われる建築物は耐震診断によって耐震性を判定することになる。
既設コンクリート構造物の耐震診断は、日本建築防災協会発行の「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説」により行うのが一般的である。構造体の保有する耐震性能を構造耐震指標Isとし、対応する判定値を構造体新判定指標Isoとして表し、Is≧Isoであれば、構造体の保有する耐震性能が判定値以上であるので、構造体は一応安全、すなわち想定する地震動に対して所要の耐震性能を確保しているとし、そうでなければ耐震性に疑問ありとする。耐震性に疑問ありとされた建築物は耐震対策をすることになる
耐震補強工法には、壁の増設による補強、柱の補強、鉄骨系架構による補強、外付けフレームの増設による補強などがある。外付けフレームの増設の中にはプレストレスを利用したものがある。
問題B-3
昭和40年頃までに建設されたコンクリート橋梁のなかで、プレテンション方式によりプレストレスが導入されたT桁橋について、以下の問に答えよ。
(1)T桁橋の間詰め部で観察される変状とその原因について述べよ。
(2)T桁橋の間詰め部の変状に対して適用される補修・補強工法を述べよ。また、その対策工法を採用する際の留意点について述べよ。
(1)T桁橋の間詰め部で観察される変状とその原因
T桁橋の間詰め部は、昭和40年代頃までは主桁上床版のテーパーが設けられていない場合や、主桁からの差し筋が設置されていない場合があった。そのため、間詰めコンクリート部の漏水・錆汁や遊離石灰の滲出が懸念される箇所である。
(2)T桁橋の間詰め部の変状に適用される補修・補強方法とその留意点
間詰めコンクリートの変状が軽微な場合は、いび割れ補修工法を実施する。ひび割れ補修工法には、注入工法、充填工法、表面塗布工法がある。注入工法と表面塗布工法は、一般に0.2mm以下の微細なひび割れに対し劣化因子の遮断を目的に行われ、充填工法は0.5㎜以上の比較的大きなひび割れ部に適用する。また、注入工法の施工上の留意点としては、注入箇所が漏水等によって湿潤状態にあると接着不良を起す可能性があるので、注入材は性能の確認された湿潤面用注入材を用いなければならない。セメント系やポリマーセメント系の注入材を注入する場合は、注入箇所が乾燥状態にあると注入途中で目詰まりを起してしまうため、注入材の注入前に水を注入する等して湿潤状態にする必要がある。
変状が著しく悪い場合な、床版コンクリートを取り除き、新しいコンクリートを打設する、断面修復工法を実施する。断面修復工法には、左官工法、注入工法、吹き付け工法があり、施工条件・修復規模を考慮して工法を選定する。また、多量の塩化物イオンが侵入したり、中性化が進行したコンクリートの補修を行う場合は、断面修復部と未修復部の間にマクロセルが形成されて未修復部の鋼材腐食が進行するマクロセル腐食に留意する必要がある。さらに、断面修復工法では、コンクリートを大きくはつり取ることによって、部材の応力状態に影響を与える可能性があるので、床版の構造性能の照査を実施する必要がある。
上記床版の構造性能照査で補強が必要になった場合は接着工法等で補強する。接着工法には、鋼板接着工法とFRP接着工法がある。鋼板接着工法は、コンクリート部材の表面に鋼板を取付け、鋼板とコンクリートの空隙に注入用接着剤を注入し補強材としての鋼材を接着させて既存部材と一体化させることにより耐力向上を図る工法である。また、本工法を床版に適用する場合は、滞水の可能性があるので事前に橋面防水にて床版下面への漏水を防ぐことが重要である。FRP接着工法は、連続繊維を1方向あるいは2方向に配置してシート状にした補強材を接着し、既設部材と一体化させ耐力の向上を図る工法である。連続シートには、炭素繊維やアラミド繊維がある。また、本工法に使用するプライマー及び含浸接着樹脂は、一般的にエポキシ樹脂が用いられるが、使用にあたっては連続繊維シートとの適合性を考慮して使用しなければならない。
上記の接着工法時の床版下面への漏水を防止または劣化因子の浸透防止のために橋面防水工や床版下面には表面被覆工法を実施する必要がある。道路橋の橋面防水の種類は大きく分けて、シート系防水と塗布系防水の2種類がある。シート系防水は、主に基材のポリエステル不繊布に改質アスファルトを含浸させた積層構造のアスファルト系シート防水の実績が多い。塗布系防水は、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂などを添加したアスファルト加熱型の実績が多い。表面被覆工法には、有機系表面被覆工法と無機系表面被覆工法があり、コンクリート表面を有機系または無機系の材料で覆うことにより外部からの劣化因子の浸入を制御し、構造物の耐力性を向上させる目的で実施する。また、表面被覆材は、適用構造物の置かれている環境条件や劣化状態の違いに応じて各種材料を使い分けることが重要であり、その要求性能に、防水性・柔軟性・遮塩性・透湿性などが挙げられる。
T桁橋の間詰め部は、昭和40年代頃までは主桁上床版のテーパーが設けられていない場合や、主桁からの差し筋が設置されていない場合があった。そのため、間詰めコンクリート部の漏水・錆汁や遊離石灰の滲出が懸念される箇所である。
(2)T桁橋の間詰め部の変状に適用される補修・補強方法とその留意点
間詰めコンクリートの変状が軽微な場合は、いび割れ補修工法を実施する。ひび割れ補修工法には、注入工法、充填工法、表面塗布工法がある。注入工法と表面塗布工法は、一般に0.2mm以下の微細なひび割れに対し劣化因子の遮断を目的に行われ、充填工法は0.5㎜以上の比較的大きなひび割れ部に適用する。また、注入工法の施工上の留意点としては、注入箇所が漏水等によって湿潤状態にあると接着不良を起す可能性があるので、注入材は性能の確認された湿潤面用注入材を用いなければならない。セメント系やポリマーセメント系の注入材を注入する場合は、注入箇所が乾燥状態にあると注入途中で目詰まりを起してしまうため、注入材の注入前に水を注入する等して湿潤状態にする必要がある。
変状が著しく悪い場合な、床版コンクリートを取り除き、新しいコンクリートを打設する、断面修復工法を実施する。断面修復工法には、左官工法、注入工法、吹き付け工法があり、施工条件・修復規模を考慮して工法を選定する。また、多量の塩化物イオンが侵入したり、中性化が進行したコンクリートの補修を行う場合は、断面修復部と未修復部の間にマクロセルが形成されて未修復部の鋼材腐食が進行するマクロセル腐食に留意する必要がある。さらに、断面修復工法では、コンクリートを大きくはつり取ることによって、部材の応力状態に影響を与える可能性があるので、床版の構造性能の照査を実施する必要がある。
上記床版の構造性能照査で補強が必要になった場合は接着工法等で補強する。接着工法には、鋼板接着工法とFRP接着工法がある。鋼板接着工法は、コンクリート部材の表面に鋼板を取付け、鋼板とコンクリートの空隙に注入用接着剤を注入し補強材としての鋼材を接着させて既存部材と一体化させることにより耐力向上を図る工法である。また、本工法を床版に適用する場合は、滞水の可能性があるので事前に橋面防水にて床版下面への漏水を防ぐことが重要である。FRP接着工法は、連続繊維を1方向あるいは2方向に配置してシート状にした補強材を接着し、既設部材と一体化させ耐力の向上を図る工法である。連続シートには、炭素繊維やアラミド繊維がある。また、本工法に使用するプライマー及び含浸接着樹脂は、一般的にエポキシ樹脂が用いられるが、使用にあたっては連続繊維シートとの適合性を考慮して使用しなければならない。
上記の接着工法時の床版下面への漏水を防止または劣化因子の浸透防止のために橋面防水工や床版下面には表面被覆工法を実施する必要がある。道路橋の橋面防水の種類は大きく分けて、シート系防水と塗布系防水の2種類がある。シート系防水は、主に基材のポリエステル不繊布に改質アスファルトを含浸させた積層構造のアスファルト系シート防水の実績が多い。塗布系防水は、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂などを添加したアスファルト加熱型の実績が多い。表面被覆工法には、有機系表面被覆工法と無機系表面被覆工法があり、コンクリート表面を有機系または無機系の材料で覆うことにより外部からの劣化因子の浸入を制御し、構造物の耐力性を向上させる目的で実施する。また、表面被覆材は、適用構造物の置かれている環境条件や劣化状態の違いに応じて各種材料を使い分けることが重要であり、その要求性能に、防水性・柔軟性・遮塩性・透湿性などが挙げられる。